ちゅうこ 宙狐
岡山県美作市の有限会社田中酒造場が手掛ける純米酒シリーズである。 田中酒造場の代表銘柄「武蔵の里」とは異なる酵母を使用し、しぼりたてや季節限定酒など、製造から一年以内の旬の純米酒を中心に展開している。原酒タイプを基本とし、季節によってさまざまな姿の「宙狐」が登場するのが特徴である。 代表的な「宙狐 純米生原酒」では、山田錦とアケボノを使用し、精米歩合60%、アルコール度数17度、日本酒度+4のやや辛口に仕上げられている。
製造者:有限会社田中酒造場
生産地:岡山県美作市
種類:純米酒シリーズ
主な使用米:山田錦、アケボノ
代表商品の精米歩合:60%
代表商品のアルコール度数:17度
狐との関わり
「宙狐」という名前そのものが、狐に関する地域の言葉に由来している。
田中酒造場によれば、「宙狐」は中国地方の山間部で使われる「きつね火」の別称である。さらに、宙狐が現れると何か良いことが起こる前兆だと伝えられている。
そこから、
「宙狐を飲んだらいいことが起こる」
という願いを込め、これまでに出会ったことのないような美味しい日本酒を届けたいという思いで「宙狐」と名付けられた。
そのため本商品は、
・酒名そのものが狐に関する言葉
・「きつね火」という伝承に由来する
・良いことの前兆という地域の俗信を商品コンセプトにしている
という、かなり直接的な狐との関係を持つ。
宙狐とは
宙狐は「ちゅうこ」と読む。
一般的な言葉としてはあまり知られていないが、中国地方の山間部などで「きつね火」を意味する呼び名として伝わっている。
きつね火とは、夜の山野などで正体不明の火が点々と見える現象を、狐が灯した火だと考えた日本の怪異・伝承である。
地域によって狐火、鬼火などさまざまな名称が存在するが、美作を含む中国地方の一部では「宙狐」という呼び名が残されてきた。
田中酒造場は、こうした地域に伝わる狐文化を日本酒の銘柄として現代へ受け継いでいる。
田中酒造場
宙狐を造る田中酒造場は、岡山県美作市古町にある酒蔵である。
従来は「武蔵の里」を中心に酒造りを行ってきたが、それとは異なる酵母や酒質を試す新たなシリーズとして「宙狐」を展開している。
美作地方は宮本武蔵ゆかりの地域として知られ、「武蔵の里」という銘柄もその土地柄を反映したものとなっている。
一方、「宙狐」では地域に伝わる狐火の呼称を採用し、同じ美作という土地の別の文化を日本酒として表現している。
純米生原酒
宙狐シリーズの中心的な商品が「宙狐 純米生原酒」である。
使用米には国産の山田錦とアケボノを使用し、精米歩合は60%。
アルコール度数は17度、日本酒度は+4で、やや辛口に仕上げられている。
味わいは、
・米の旨味
・爽やかな酸味
・ほのかな甘味
・軽快な飲み口
などが特徴で、原酒でありながら重すぎず、飲み飽きしにくいタイプとして紹介されている。
田中酒造場では、ロックから常温まで幅広い温度帯で楽しめる酒としている。
季節によって姿を変える宙狐
宙狐は一種類だけの商品ではなく、季節ごとに異なる酒が登場するシリーズである。
確認できる商品には、
・宙狐 純米生原酒
・宙狐 純米原酒 火入れ
・宙狐 かすみ純米
・宙狐 ひやおろし純米原酒
・宙狐 山廃純米酒
などがある。
季節によって酒質や熟成状態が変化するため、一年を通して異なる「宙狐」を楽しめる。
狐が姿を変えるという伝承を直接の商品コンセプトとしているわけではないが、季節によってさまざまな姿を見せるシリーズという点も狐らしさを感じさせる。
かすみ純米
「宙狐 かすみ純米酒」は、酒を搾る際に生まれる薄い濁りを残したタイプである。
槽でもろみを搾った際、酒袋の織り目からにじみ出る霞がかった酒をイメージして造られており、すっきりとした後味を特徴としている。
アルコール度数は17度、使用米は山田錦とアケボノ、精米歩合60%である。
「宙狐」という幻想的な名前と、霞がかった酒の外観という組み合わせも印象的な一本である。
ひやおろし
秋には「宙狐 ひやおろし純米原酒」も登場する。
新酒が完成した後に一度だけ火入れを行い、夏の間ゆっくり熟成させた酒を秋に出荷する季節限定商品である。
新酒時の荒々しさが落ち着き、柔らかな旨味が増した状態を楽しめる。
春夏秋冬で異なる酒が現れるため、「宙狐」を追いかけながら季節の日本酒を楽しむこともできる。
山廃純米
宙狐には「山廃純米酒」も存在する。
こちらはしっかりした酸味と旨味を特徴とする酒で、燗酒にも向くタイプとして紹介されている。
使用米は山田錦とアケボノ、精米歩合60%。
アルコール度数15%、日本酒度+4という仕様の商品が確認されている。
同じ「宙狐」でも、生原酒の軽快な酸味から山廃純米のしっかりした旨味まで幅広い酒質が存在する。
ラベル
宙狐では、造りによってラベルの色も使い分けられている。
田中酒造場公式では、
白地に赤文字:速醸もと
茶色地に金文字:山廃もと
と紹介されている。
一つの銘柄の中で、酒造りの違いをラベルによって見分けられるようになっている。
「宙狐」という独特な名前自体の存在感が強く、狐関連酒の中でも文字そのものを楽しめるデザインとなっている。
豆知識
「宙狐」は、商品用に新しく作られた造語ではない。
田中酒造場がある中国地方の山間部に実際に伝わる「きつね火」の呼称を採用している。
さらに「宙狐が現れると良いことが起きる前兆」とする地域の言い伝えまで、酒のコンセプトに取り込まれている。
これまで紹介してきた狐酒には、
・稲荷信仰を題材にするもの
・狐のラベルを使用するもの
・九尾の狐など妖狐伝説を題材にするもの
などがあるが、宙狐は「地域に残る狐火の別称」をそのまま酒名にした珍しい例である。
特に「ふぉくすなっ♪」では、日本各地で異なる狐の呼び名・伝承が、現代の商品名として残されている事例としても紹介価値が高い。
関連項目
- 田中酒造場
- 武蔵の里
- 狐火
- 宙狐
- 美作
- 純米酒
- 岡山県
- 日本酒
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