すうぃふとぎつね スウィフトギツネ
北米の草原に暮らす小型のキツネ。素早い走りと、年間を通して巣穴を利用する暮らしが特徴である。
概要
スウィフトギツネは、北アメリカのグレートプレーンズを中心に分布する、イヌ科キツネ属の動物である。学名は Vulpes velox、英名は「Swift fox」。
体はイエネコほどの大きさで、北米のイヌ科動物の中でも特に小さい。背の低い草が広がる開けた環境に適応し、巣穴を隠れ場所や子育ての場所として利用する。
カナダでは一度野生から姿を消したが、再導入によって復帰した。草原の保全と野生動物の回復を考えるうえでも重要な種である。出典:カナダ公園局
基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
和名 | スウィフトギツネ |
学名 | Vulpes velox |
英名 | Swift fox |
分類 | 哺乳綱・食肉目・イヌ科・キツネ属 |
分布 | アメリカ合衆国のグレートプレーンズ、カナダ南部の一部 |
全長 | 約80cm(尾を含む) |
肩高 | 約30cm |
体重 | おおむね2~3kg |
主な生息環境 | 背の低い草が広がる草原 |
食性 | 小型哺乳類、昆虫、鳥類、果実などを利用する雑食性 |
主な活動時間 | 夜間 |
体の大きさには性別や個体による違いがあり、一般にオスがやや大きい。出典:Animal Diversity Web
姿と特徴
背中は灰色がかった黄褐色で、体の側面や脚には淡い赤褐色が見られる。腹側は白色から淡い黄褐色で、大きく立った耳と、ふさふさした尾を持つ。
外見上の目印は、鼻先の左右にある黒い斑と、黒い尾の先端である。淡い毛色の中で、顔と尾の黒い部分がよく目立つ。出典:カナダ公園局
英名の「swift」は「素早い」を意味する。カナダのCOSEWIC評価報告書では、時速60kmに達する走行能力が紹介されている。出典:COSEWIC・2021年評価報告書
分布と生息環境
主な生息地は、ロッキー山脈の東側に広がるグレートプレーンズである。短草草原や、丈の異なる草が混在する草原のうち、平坦または緩やかに起伏する土地を利用する。
カナダでは、再導入によってアルバータ州南部とサスカチュワン州南部に個体群が戻っている。グラスランズ国立公園とその周辺も生息地となっている。出典:COSEWIC・2021年評価報告書
草丈が高く密生した場所よりも、見通しのよい草原を好む。一部では休耕地なども利用するが、農地化によって草原が失われたり分断されたりすることは、生息域の縮小につながる。出典:IUCNイヌ科動物専門家グループ
巣穴を中心とした暮らし
スウィフトギツネは、イヌ科の中でも巣穴への依存度が高い動物である。繁殖期だけでなく年間を通して巣穴を利用し、自分で掘るほか、アメリカアナグマやジリス類の穴を改修することもある。
巣穴は子育ての場所であると同時に、捕食者や厳しい天候から身を守る避難場所でもある。小さな体で草原を生き抜くうえで、走る速さだけでなく、逃げ込める穴の存在が重要となる。出典:COSEWIC・2021年評価報告書
主に夜間に活動するが、冬の暖かい昼間には巣穴の外で日光浴をすることもある。出典:Animal Diversity Web
食べ物
ネズミ類やウサギ類などの小型哺乳類、昆虫、鳥類を主な餌とする。出典:カナダ公園局
このほか、爬虫類や果実、動物の死骸なども利用する。食べ物の種類は季節や地域によって変わり、そのときに手に入るものを柔軟に食べる。出典:Animal Diversity Web
繁殖と子育て
繁殖は通常年に一度で、時期は地域によって異なる。南方の個体群では早く、北方では遅くなる傾向がある。
妊娠期間は約50~60日で、一般に2~6頭の子を産む。子は地下の巣穴で生まれ、生後約1か月までは主に巣内で過ごす。生後6~7週間ほどで離乳し、その後も親と暮らしながら成長する。出典:Animal Diversity Web
減少と保全
カナダでの地域絶滅と復帰
カナダでは、草原の消失や迫害などによって個体数が減少し、1930年代に野生から姿を消した。ただし、これはカナダ国内での地域絶滅であり、種全体が絶滅したわけではない。
1983年から始まった再導入によって、アルバータ州とサスカチュワン州に野生個体群が再び成立した。現在も草原の消失と分断が課題となっており、カナダの種の保全制度では「Threatened」に指定されている。出典:Wilder Institute
分断された個体群をつなぐ取り組み
アメリカ合衆国でも再導入が行われている。モンタナ州のフォートベルナップでは、先住民の部族とスミソニアンなどが協力し、2020年に27頭を放した。
この事業には、かつての生息地へキツネを戻すだけでなく、離れて分布する個体群の間をつなぐ目的もある。野生復帰後に繁殖し、周囲へ分布を広げられる環境を整えることが重要となる。出典:スミソニアン国立動物園・保全生物学研究所
世界全体と地域ごとの評価
IUCNの種全体の評価では、スウィフトギツネは低懸念(Least Concern)とされる。一方、地域によっては個体数が少なく、再導入や生息地の保護が必要である。