こぎつね 小ぎつね
日本語の歌詞を付けた童謡・唱歌である。日本語詞は勝承夫によるもので、1947年に文部省発行の音楽教科書へ掲載された。現在も小学校の音楽教材などで親しまれている楽曲である。 日本語版では、山の中で暮らす小ぎつねが、草の実で化粧をしたり、紅葉をかんざしのように身につけたり、冬の山で過ごしたりする姿が描かれている。キツネを直接の主人公とした、日本でも広く知られる童謡の一つである。
基本情報
タイトル:小ぎつね
読み:こぎつね
日本語詞:勝承夫
原曲:ドイツ民謡
ジャンル:童謡・唱歌
日本語版発表:1947年
「小ぎつね」は1947年に刊行された文部省の音楽教科書に掲載され、その後も学校教育の中で歌い継がれてきた。現在の小学校音楽教科書にも、勝承夫による日本語詞・ドイツ民謡として掲載されている例が確認できる。
楽曲について
日本語版の「小ぎつね」は、山で暮らす子ギツネの姿を季節感とともに描いた楽曲である。
小ぎつねは草の実を使って化粧をし、紅葉をかんざしに見立てるなど、自然の中にあるものを使っておしゃれを楽しむ存在として表現されている。また、冬になると枯葉を衣服に見立てながら寒い山で暮らす様子も描かれる。
人間のように化粧をしたり身なりを整えたりする擬人化表現が特徴的であり、野生動物としてのキツネというよりも、親しみやすく愛らしい童話的なキャラクターとして描かれている。
「コンコン」というキツネの鳴き声をイメージした表現が繰り返される点も特徴で、幼い子どもでも覚えやすい楽曲となっている。
キツネとの関係
本作はタイトルだけでなく、歌の主人公そのものが小ぎつねであり、楽曲全体がキツネの姿を描いている。
特に、日本語版ではキツネが非常に愛らしい存在として表現されている点が特徴である。草の実や紅葉など山にある自然物を使っておしゃれをする姿からは、山の自然とともに生きるキツネのイメージも感じられる。
また、キツネを人間の少女のように擬人化している点も興味深い。キツネは日本の昔話や伝承では人間に化ける動物として知られているが、「小ぎつね」では恐ろしい妖狐や人を化かす存在ではなく、親しみやすい子どものようなキャラクターとして描かれている。
日本における「かわいらしいキツネ」というイメージを代表する童謡の一つといえる。
ドイツの原曲
「小ぎつね」の旋律は、ドイツの有名な子どもの歌「Fuchs, du hast die Gans gestohlen」に由来する。題名は日本語にすると「キツネよ、お前はガチョウを盗んだ」といった意味である。
このドイツ語の歌は、1824年にエルンスト・アンシュッツが古い民謡の旋律に詞を付けて発表した作品である。
原曲では、ガチョウを盗んだキツネに対して、ガチョウを返さなければ猟師に撃たれてしまうと警告する内容になっている。最後にはガチョウではなくネズミで我慢するようキツネに忠告するなど、日本語版とは大きく異なる物語が展開される。
日本語版と原曲のキツネ像
「小ぎつね」をキツネの楽曲として見るうえで特に興味深いのが、日本語版とドイツ語版でキツネの描かれ方が大きく異なることである。
ドイツ語の原曲では、キツネは家畜であるガチョウを盗む「泥棒」として登場する。これはヨーロッパにおいて、キツネが鶏やガチョウなどの家禽を狙うずる賢い動物として描かれてきた文化的イメージとも重なる。
一方、日本語版ではその物語は使用されず、山の中でおしゃれをしたり冬を過ごしたりする、かわいらしい小ぎつねへと生まれ変わっている。
同じ旋律、そして同じ「キツネ」を主人公としながら、ドイツでは「ガチョウを盗むキツネ」、日本では「山で暮らすかわいらしい小ぎつね」となっている点は非常に特徴的である。
キツネという動物が、それぞれの文化や子ども向け作品の中でどのように表現されてきたのかを比較できる楽曲でもある。