ぱんぱすぎつね パンパスギツネ
南米の草原や低木地に暮らし、小動物から果実まで幅広い食べ物を利用する、灰色の毛並みのキツネである。
概要
アルゼンチンやウルグアイなど、南アメリカ南部に分布するイヌ科動物。「パンパス」は南米に広がる草原地帯の名称であり、本種はその代表的な住人の一つである。
英語では「Pampas fox」のほか、「Azara’s fox」とも呼ばれる。クルペオギツネやセチュラギツネと同じ Lycalopex 属に分類され、アカギツネなどのキツネ属(Vulpes)とは異なる系統に属する。出典:IUCNイヌ科専門家グループ
基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
和名 | パンパスギツネ |
英名 | Pampas fox、Azara’s fox |
学名 | Lycalopex gymnocerca/Lycalopex gymnocercus |
分類 | 哺乳綱・食肉目・イヌ科・Lycalopex 属 |
分布 | アルゼンチン北部・中部、ウルグアイ、パラグアイ、ボリビア東部、ブラジル南部など |
頭胴長 | 平均約62cm |
尾長 | 平均約34cm |
体重 | 約4.2~6.5kgを目安とする |
主な生息環境 | 草原、低木地、開けた林、牧草地、農耕地 |
食性 | 雑食性 |
保全状況 | LC(低懸念) |
体格には地域差や個体差があり、上記の範囲を外れる個体も記録されている。体格:Animal Diversity Web
学名は資料によって表記が異なる。Mammal Diversity Databaseでは Lycalopex gymnocerca を採用しているが、保全資料や多くの研究では Lycalopex gymnocercus が使われている。古い文献には Pseudalopex gymnocercus という名前でも登場する。出典:Mammal Diversity Database
外見
背中や体の側面は、明るい毛と暗い毛が混じった灰色をしている。頭部や首、耳の外側には赤褐色が入り、腹側は淡い灰色から白っぽい色になる。
耳は比較的大きく、鼻先は細長い。口角にかけて黒っぽくなる口元と、先端が黒いふさふさした尾が特徴である。尾の付け根の上側にも黒い部分がある。
雄は雌よりやや大きく、分布域の北部に暮らす個体は、南部の個体よりも鮮やかな色合いになる傾向がある。出典:Animal Diversity Web
分布と生息環境
南米南部のパンパスをはじめ、チャコの低木地や、アルゼンチンの乾燥した低木林などにも生息する。
開けた草原を好むが、草地だけに限定されるわけではない。丘陵、海岸の砂丘、まばらな林、牧草地、農耕地なども利用する。牧畜や農業によって変化した地域にも暮らせる適応力を持つ。
ただし、農地を利用できることと、自然の植生が不要であることは同じではない。行動追跡の研究では、人為的に変化した景観の中でも、自然がよく残った場所を選ぶ傾向が報告されている。出典:IUCNイヌ科専門家グループ
食べ物
果実も重要な食料
パンパスギツネは雑食性で、小型哺乳類や鳥、昆虫、果実、動物の死骸などを利用する。食べ物の構成は地域によって異なり、その場所で得られる食料に応じて柔軟に変化する。出典:Lucherini・Luengos Vidal(2008)
アルゼンチン北西部の乾燥したチャコ林で行われた研究では、431個の糞を調べた結果、乾季・雨季のどちらでも果実が主要な食物となっていた。動物質の食物としては、甲虫やサソリなどの節足動物、小型哺乳類がよく確認された。
これは特定の調査地で得られた結果であり、全分布域の食生活をそのまま示すものではない。それでも、果実が単なる補助食ではなく、地域によっては食生活の中心になることを示している。出典:Varelaほか(2008)
行動と子育て
単独で食べ物を探す
食べ物を探す際は、通常、単独で行動する。夜間や薄明時に活動することが多いが、日中にも活動し、その時間帯には地域差がある。
食料が豊富なときには、食べ物を蓄える行動も知られている。隠れ場所には岩の空洞や木の穴などを利用する。出典:Lucherini・Luengos Vidal(2008)
つがいで子どもを育てる
繁殖期にはつがいをつくり、雄と雌の両方が子育てに関わる。雄が巣にいる雌や子どもへ食べ物を運ぶことも知られている。出典:Animal Diversity Web
妊娠期間は約55~60日。南半球の春を中心とする9~12月ごろに出産し、一度に生まれる子は1~8頭、ある調査での平均は約3.4頭である。授乳期間は約2か月とされる。出典:Lucherini・Luengos Vidal(2008)
人間との関わりと保全
毛皮利用と家畜をめぐる衝突
毛皮を目的とした捕獲の歴史があり、農村部では子羊への被害を防ぐ目的や、被害への報復として駆除されることもある。
IUCNの評価はLC(低懸念)で、個体数傾向は安定とされている。ただし、個体群に関する長期的な情報は限られており、地域によっては捕獲圧などによる減少も報告されている。出典:IUCNイヌ科専門家グループ
イヌとの交雑が報告された事例
2023年には、ブラジル南部で保護された雌のイヌ科動物について、パンパスギツネとイヌの交雑個体であることを示す研究が発表された。染色体とDNAの分析によって検討された、両種間の交雑の初報告である。