くまときつね くまときつね
いもとようこ(文・絵)による絵本である。2011年に「日本むかしばなし」シリーズの一冊として刊行され、日本各地に伝わる昔話を、いもとようこならではの温かみのある絵と文章で描いている。 本作は、日本の昔話によく見られる「正直者」と「知恵者」の対比を題材としており、気のいいクマと、機転の利くキツネとのやり取りを通して、知恵の使い方や欲張ることの愚かさをユーモラスに描いている。
あらすじ
ある日、クマとキツネは一緒に畑を作ることにする。収穫した野菜は半分ずつ分ける約束をし、最初は「地面の上にできるものはクマ、地面の下にできるものはキツネ」と決める。
ところが、キツネは作物の特徴を知っており、自分が得をする野菜ばかりを育てる。収穫のたびにクマは損をし、キツネだけが得をする結果となる。
悔しい思いをしたクマは、次こそはと分け方を変えるが、今度もキツネは一枚上手だった。果たして最後に笑うのは誰なのか――。昔話らしい機知に富んだ結末が待っている。
キツネとの関わり
本作のキツネは、日本の昔話に数多く登場する「知恵者」の典型として描かれている。
人を化かす妖怪のような存在ではなく、相手よりも一歩先を読み、自分に有利な方法を考える賢い動物として登場する。その姿は『さるかに合戦』や『かちかち山』などの昔話に登場する動物たちにも通じる、日本の昔話ならではのキャラクター性を受け継いでいる。
一方で、相手を出し抜こうとする行動ばかりでは、やがて自分にも結果が返ってくることを示しており、単なる「賢いキツネ」の物語では終わらない奥深さを持っている。
見どころ・魅力
本作最大の魅力は、日本の昔話の面白さを、現代の子どもにも分かりやすく楽しめる形で描いている点である。
「地面の上」と「地面の下」という単純な約束から生まれる駆け引きは、小さな子どもでも理解しやすく、ページをめくるたびに「次はどうなるのだろう」と期待が膨らむ構成になっている。昔話を知らない読者でも、自然と物語の世界へ入り込むことができる。
また、いもとようこの柔らかな色彩と丸みを帯びた優しいイラストは、ずる賢いキツネやお人よしのクマを親しみやすく表現している。教訓を押しつけるのではなく、物語を楽しみながら「知恵をどう使うべきか」を考えられる点も本作の魅力である。
まとめ
『くまときつね』は、日本に古くから伝わる昔話をもとに、クマとキツネの知恵比べを描いた絵本である。ユーモアあふれる物語の中には、知恵や工夫の大切さ、欲張りすぎることへの戒めなど、日本の昔話ならではの教訓が込められている。
狐を題材とした創作作品の中でも、昔話に登場する「知恵者」としてのキツネの魅力を分かりやすく描いた作品であり、日本の民話文化に触れる入門書としてもおすすめできる一冊である。