きゅうびのびゃっこ/さはしとしひこ 九尾の白狐/佐橋俊彦
「九尾の白狐」は、作曲家・佐橋俊彦による特撮ドラマ『仮面ライダーギーツ』の劇伴曲である。2023年9月20日に発売された『仮面ライダーギーツ TV オリジナル サウンド トラック』のDisc 2に収録されており、Disc 2の6曲目、アルバム全体では51曲目にあたる。楽曲時間は約1分49秒である。 曲名の「九尾の白狐」は、『仮面ライダーギーツ』の主人公・浮世英寿が到達する最強形態「仮面ライダーギーツⅨ(ナイン)」を表す言葉と強く結び付いている。ギーツⅨが初登場した第38話のサブタイトルも「慕情F:九尾の白狐!」であり、東映公式サイトでもギーツⅨを「九尾の白狐」と表現している。 仮面ライダーギーツは作品開始時からキツネをモチーフとするライダーであるが、ギーツⅨではその狐要素が「九尾」へと発展する。純白の姿と背中に展開する九本の尾、狐を思わせる頭部、そして超常的な「創世の力」が組み合わされ、「九尾の白狐」という妖狐的なイメージが最強フォームそのものへ取り込まれている。 そのため本曲は、九尾の狐伝承そのものを音楽化した作品ではないものの、日本の狐・妖狐文化をデザインへ取り込んだ仮面ライダーギーツⅨを象徴する狐関連劇伴として位置付けることができる。
基本情報
タイトル:九尾の白狐
作曲:佐橋俊彦
アーティスト表記:佐橋俊彦
使用作品:仮面ライダーギーツ
収録作品:仮面ライダーギーツ TV オリジナル サウンド トラック
発売日:2023年9月20日
収録位置:Disc 2・6曲目/全体51曲目
楽曲時間:約1分49秒
形態:インストゥルメンタル/特撮劇伴
品番:AVCD-63479~80
音楽レーベル:avex trax系
国:日本
同サウンドトラックはCD2枚組で、『仮面ライダーギーツ』本編を彩った佐橋俊彦による劇伴を収録している。avex公式では、作品全体の音楽について「70年代ブラスロック」を基調とした劇伴集と説明されている。
楽曲について
「九尾の白狐」は歌詞を持たないインストゥルメンタル曲である。
したがって、九尾の狐の伝説や物語を歌詞によって説明する作品ではない。
曲名と『仮面ライダーギーツ』本編の展開を合わせて理解することで、その意味が明確になる。
Disc 2では、
レーザーブーストフォーム
ジャマトグランプリ
所詮この世界
悪趣味なオーディエンス
最後の審判
九尾の白狐
天下分け目の決戦
化かされてくれてサンキュー
という順番で収録されている。
「九尾の白狐」の直後に「天下分け目の決戦」が続き、さらに「化かされてくれてサンキュー」という狐の「化かす」イメージを感じさせるタイトルが置かれているのも、『ギーツ』らしい曲名構成である。
キツネとの関係
本作とキツネとの関係は非常に強い。
「九尾の白狐」が結び付く仮面ライダーギーツⅨは、もともとキツネをモチーフとしてきた仮面ライダーギーツが、さらに九尾の狐を思わせる姿へ進化した最強フォームだからである。
東映公式は第38話の予告で、ギーツの進化した姿をそのまま「さらに進化した九尾の白狐!」と紹介している。
さらに第39話の公式解説でも、
「ギーツは九尾の狐となり」
と明言されている。
したがって「九尾」はファン側だけの解釈ではなく、作品公式が明確に使用している表現である。
仮面ライダーギーツ
『仮面ライダーギーツ』は、2022年9月4日から2023年8月27日まで全49話が放送された仮面ライダーシリーズ作品である。音楽は佐橋俊彦が担当した。
主人公は浮世英寿。
英寿が変身する仮面ライダーギーツは、白い狐を思わせる頭部を特徴とするライダーである。
作品では「デザイアグランプリ」と呼ばれるゲームを舞台に、参加者たちがそれぞれの理想の世界を実現するため戦う。
狐モチーフの主人公という設定は物語中でも繰り返し利用され、公式エピソードタイトルにも「キツネ狩り」が登場する。第16話ではギーツを排除するゲームそのものが「キツネ狩り」と名付けられている。
浮世英寿
仮面ライダーギーツへ変身するのは浮世英寿である。
英寿は非常に頭の回転が速く、相手の策を先読みしながら行動する人物として描かれる。
キツネは日本の昔話などで、
賢い
狡猾
人を化かす
簡単には本心を見せない
といったイメージを持つことがある。
英寿にもこうした「狐らしい策士」というキャラクター性があり、作品公式の文章でも「狐の化かし」という表現が実際に使われている。
そのためギーツの狐モチーフは、外見だけではなく主人公の人物像にも重ねられている。
仮面ライダーギーツⅨ
「九尾の白狐」と最も深く関係するのが、仮面ライダーギーツⅨである。
ギーツⅨは、デザイアドライバーにブーストマークⅨバックルをセットして変身する形態で、第38話「慕情F:九尾の白狐!」に初登場した。
この形態では、浮世英寿が「創世の力」を操ることができる。
東映公式の仮面ライダー図鑑によれば、
敵の攻撃を無に帰す
破壊された建造物を元へ戻す
破壊と創造を行う
事象そのものを改変する
といった超常的な現象を引き起こせる。
単なる身体能力強化ではなく、世界そのものへ干渉する神のような力を持つ最強形態である。
九本の尾
ギーツⅨの狐要素を最も明確に示すものが、背中にある九本の尾である。
バンダイスピリッツ公式では、ギーツⅨの背中にある「ギーツテールナイン」について、九本の尾を持つ構造として紹介している。
つまり、
ギーツ=狐
という従来のデザインが、
ギーツⅨ=九尾の狐
へ発展したことが視覚的にも分かる。
九尾という特徴は、日本・中国を含む東アジアの妖狐文化で特に有名なモチーフである。
九尾の狐
九尾の狐は、東アジア各地の伝承に登場する九本の尾を持つ狐である。
日本では特に玉藻前の伝説によって有名となり、
強大な妖力
長寿
変化
人間を惑わす力
などを持つ妖狐として広く知られている。
ギーツⅨも、
九本の尾
超常的な力
純白の狐
という特徴を持つため、九尾の狐を強く連想させるデザインである。
ただし、『仮面ライダーギーツ』公式が「ギーツⅨは玉藻前を直接モデルにした」と説明した資料は確認できない。
そのため、
「九尾の狐という妖狐モチーフ」
とは言えるが、
「玉藻前そのものが元ネタ」
とまで限定することは避けた方がよい。
「白狐」
本曲では「九尾の狐」ではなく、
「九尾の白狐」
となっている。
これはギーツⅨの外見と直接対応している。
ギーツⅨの全身は純白を基調としており、公式商品紹介でも「純白のボディ」が特徴として説明されている。
白い狐は日本の狐文化においても特別な印象を持つ。
稲荷信仰では白狐が神聖な狐として語られることがあり、創作でも、
霊狐
神狐
高位の妖狐
を表す色として白が使用されることが多い。
ただし、ギーツⅨが稲荷神の白狐を直接モデルにしているとする公式説明は確認できない。
本作では、
白=ギーツの元来のカラー
と
九尾=最強形態の狐表現
が組み合わされた結果として「九尾の白狐」という名称になっていると理解するのが確実である。
第38話「慕情F:九尾の白狐!」
ギーツⅨが初登場したのは、第38話「慕情F:九尾の白狐!」である。2023年6月4日に放送された。
この回では、英寿が母・ミツメを救おうとする中で「創世の力」へ目覚める。
その前段階では純白のブーストフォームマークⅢが出現するが、まだその力を完全に制御できていない。
そして自分自身との対話や母との再会を経て、最終的にギーツⅨへ到達する。
東映公式はこの姿を、
「さらに進化した九尾の白狐」
と表現した。
したがってサウンドトラックの曲名「九尾の白狐」は、この第38話およびギーツⅨの誕生と非常に強く結び付いた名称である。
狐面をした男
第38話では、狐そのものだけでなく「狐面」も重要なモチーフとして登場する。
意識を失った英寿は謎の世界へ入り、そこで狐面をかぶった謎の男と対話する。
この男との対話を通して英寿は自身と向き合い、やがて新たな力へ到達する。
つまりギーツⅨ誕生回には、
狐をモチーフとした主人公
狐面
九尾の白狐
九本の尾
という狐要素が集中している。
「九尾の白狐」という劇伴タイトルも、この一連の狐表現の中に置かれている。
創世の力
ギーツⅨ最大の特徴は「創世の力」である。
これは単純な攻撃力ではなく、世界の状態そのものを書き換えられるほどの能力である。
古典の九尾の狐は、長い年月を生きて巨大な妖力を得た存在として語られることがある。
一方、ギーツⅨも普通の仮面ライダーの領域を超え、
破壊
再生
創造
事象改変
を行う。
そのため「九尾」という外見的モチーフと、「人智を超えた存在」という能力上のイメージが一致している。
ブーストマークⅨバックル
ギーツⅨへの変身に使用されるのが「ブーストマークⅨバックル」である。
東映公式によれば、第38話「慕情F:九尾の白狐!」で初登場したアイテムで、物理的領域の再定義や事象改変を可能とする高次の力を生み出す。
「Ⅸ」はローマ数字の9。
つまりフォーム名、アイテム名、九本の尾のすべてが「9」で統一されている。
九尾の狐というモチーフを、デザインだけでなく名称やアイテム設計にまで展開している。
ギーツバスターQB9
ギーツⅨには専用武器「ギーツバスターQB9」がある。
名称末尾の「9」も、九尾・ギーツⅨと対応する。
東映公式によれば、
ブレードモード
レールガンモード
を使い分け、「創世の力」を加えた攻撃を行う。
フォーム名、尾、変身アイテム、武器まで「九」のイメージが徹底されている点が、九尾の狐モチーフの強さを示している。
「化かされてくれてサンキュー」
サウンドトラックで「九尾の白狐」の2曲後には、
「化かされてくれてサンキュー」
という曲が収録されている。
「化かす」は、日本の狐伝承で特に有名な行動の一つである。
英寿自身も策略を用いて相手の予想を裏切るキャラクターであり、東映公式の第37話解説でも「狐の化かしが発動!」という表現が実際に使われている。
したがって『仮面ライダーギーツ』では、
外見=狐
人物像=相手を出し抜く狐
最強フォーム=九尾の狐
と、複数の層で狐のイメージが利用されている。
佐橋俊彦
『仮面ライダーギーツ』の劇伴音楽を担当したのは佐橋俊彦である。
東映公式の作品情報でも音楽担当として佐橋俊彦が明記されている。
avexは『仮面ライダーギーツ TV オリジナル サウンド トラック』について、佐橋俊彦が一年間の本編を彩るために書き下ろした劇伴集であり、70年代ブラスロックを基調とする作品だと紹介している。
「九尾の白狐」も、その中で物語後半のギーツを象徴する一曲として収録された。
サウンドトラック
『仮面ライダーギーツ TV オリジナル サウンド トラック』は2023年9月20日に発売された。
CDは2枚組、品番はAVCD-63479~80。
デジタル版では全72曲・約1時間48分として配信されている。
「九尾の白狐」は全体51曲目であり、
- 最後の審判
- 九尾の白狐
- 天下分け目の決戦
- 化かされてくれてサンキュー
という流れになっている。
物語後半の緊迫した展開と、ギーツの狐としての性格を示すタイトルが続く部分である。
狐関連楽曲としての位置付け
「九尾の白狐」は、狐との関係が非常に明確な特撮劇伴である。
整理すると、
主人公・仮面ライダーギーツ自体が狐モチーフ
最強フォームがギーツⅨ
公式がギーツⅨを「九尾の狐」「九尾の白狐」と表現
背中に九本の尾を持つ
初登場話が「慕情F:九尾の白狐!」
劇中には狐面も登場
英寿の策略を公式が「狐の化かし」と表現
サウンドトラックにも「化かされてくれてサンキュー」が存在
と、作品のさまざまな部分へ狐文化が組み込まれている。
特にギーツⅨでは、それまでの「キツネをモチーフとした仮面ライダー」から一歩進み、「九尾の狐」という妖狐的な存在へとイメージが拡張される。
ただし、玉藻前や殺生石といった特定の九尾狐伝承を物語化した楽曲ではない。
あくまで、
九尾の狐という日本・東アジアの妖狐イメージ
+
白い狐をモチーフとする仮面ライダーギーツ
+
世界を創造できる最強フォーム
を融合させた「仮面ライダーギーツⅨ」のための狐表現である。
「九尾の白狐」という曲名は、その最終進化をわずか五文字で示しており、『仮面ライダーギーツ』における狐モチーフが最も強く表れた劇伴の一つと位置付けられる。