きつねめんのおんな/えんどうこうじ 狐面の女/遠藤浩二
「狐面の女」は、作曲家・遠藤浩二による映画音楽である。2021年公開の映画『妖怪大戦争 ガーディアンズ』のために制作され、2021年8月4日発売の『オリジナル・サウンドトラック 妖怪大戦争ガーディアンズ』に8曲目として収録された。楽曲時間は1分54秒である。 曲名となっている「狐面の女」は、杉咲花が演じる劇中の主要キャラクターである。主人公・渡辺ケイを冒険へ導く謎の剣士として登場し、常に狐の面を身につけている。映画のキャスト情報でも、杉咲花の役名はそのまま「狐面の女」と記載されている。 そして物語終盤には、その正体が「九尾の狐」であることが明らかになる。したがって本曲の「狐面」は単なるファッションではなく、キャラクターの本当の正体を暗示する重要な意匠でもある。 狐面、九尾の狐、妖怪、剣士という複数の狐要素を持つキャラクターを音楽化した、狐との関係が非常に明確な映画劇伴である。
基本情報
タイトル:狐面の女
作曲:遠藤浩二
アーティスト表記:遠藤浩二
使用作品:映画『妖怪大戦争 ガーディアンズ』
収録作品:オリジナル・サウンドトラック 妖怪大戦争ガーディアンズ
発売日:2021年8月4日
収録順:8曲目
楽曲時間:1分54秒
品番:RBCP-3400
発売元:ランブリング・レコーズ
形態:インストゥルメンタル/映画劇伴
国:日本
Apple Musicでも「狐面の女」は遠藤浩二名義の楽曲として、『妖怪大戦争 ガーディアンズ(オリジナル・サウンドトラック)』収録曲に登録されている。
楽曲について
「狐面の女」は歌詞のないインストゥルメンタル楽曲である。
そのため、狐や九尾について言葉で物語を説明する作品ではない。
意味を理解するためには、映画に登場する「狐面の女」というキャラクターを見る必要がある。
サウンドトラックでは、
- アンモナイト
- 狐面の女
- かごめかごめ
- Main theme strings
- 隠神 刑部
という順に配置されている。
映画中に登場する妖怪や人物、場面をそのまま楽曲タイトルへ採用した劇伴が多く、「狐面の女」もその一つである。
したがって本曲は、
「狐面という日本文化そのものを紹介する曲」
ではなく、
「映画の登場人物・狐面の女を表現するキャラクター劇伴」
として位置付けるのが適切である。
キツネとの関係
「狐面の女」とキツネとの関係は非常に強い。
第一に、キャラクターが狐面をかぶっている。
第二に、衣装そのものにも九尾の狐のデザインが取り入れられている。
第三に、物語上の正体も九尾の狐である。
したがって、
狐面だけを身につけた普通の人間
ではない。
キャラクターの外見と正体の双方が狐と結び付いている。
ふぉくすなっ♪で分類するなら、
「九尾の狐を題材とした楽曲」
「狐面を題材とした楽曲」
「狐キャラクターのテーマ曲」
のすべてに関係する作品である。
狐面の女
狐面の女は、『妖怪大戦争 ガーディアンズ』に登場する謎の妖怪剣士である。
演じるのは杉咲花。
映画の序盤では素性を明かさず、狐の面で顔を隠した状態で登場する。
主人公・渡辺ケイが危険な冒険へ向かう際には、彼を導く存在となる。映画紹介でも「主人公ケイとともに冒険の旅に出る狐面の剣士」と説明されている。
杉咲花自身も、このキャラクターについて、ケイと「バディのような間柄」になる役だと説明している。
単なる脇役ではなく、物語を進めるうえで重要な案内役である。
「狐さん」
主人公・ケイは、この謎の女性を「狐さん」と呼ぶ。
正式な名前が分からず、狐面をつけているためである。
劇中では長い間、
本名
正体
過去
が伏せられている。
そのため狐面そのものが、彼女のキャラクター名に近い役割を果たしている。
「狐面の女」という劇伴タイトルも、本名ではなく、主人公たちから見た謎の人物としての印象をそのまま音楽名へしたものである。
狐面
キャラクター最大の特徴は、顔を覆う狐面である。
日本の狐面は、
祭礼
神楽
能・狂言
創作作品
など幅広い文化の中で用いられてきた。
現代創作では、
正体不明
妖怪
異界
神秘
和風
といった印象を表現するアイテムとしても非常に多く使用される。
『妖怪大戦争 ガーディアンズ』の狐面の女も、登場当初は素性を隠した謎の剣士であり、狐面がその神秘性を強めている。
ただし、本作の狐面を特定の神社・祭礼・伝統芸能の狐面そのものとする公式説明は確認できない。
面をつけたままのアクション
狐面の女は、面を着けたまま激しい剣術アクションを行う。
杉咲花は撮影について、面を着けると視野が普段より大幅に狭くなり、その状態でアクションをすることが難しかったと振り返っている。
つまり狐面はCGで後から追加された装飾ではなく、演者自身が実際に身につけて撮影している。
狐面によって、
顔が見えないミステリアスさ
と、
視界が制限された状態での剣士アクション
の両方が成立している。
衣装に描かれた九尾の狐
狐との関係は、面だけではない。
杉咲花へのインタビューによると、狐面の女が着るコートには「九尾の狐」がデザインとして組み込まれている。
さらに髪型にはコーンロウをモチーフとした造形が用いられ、銀・白・赤などの色を混ぜたエクステも使用された。
つまり、
狐面
衣装の九尾
髪の色彩
と、外見の段階から狐・妖怪を強く意識したデザインになっている。
後に正体が明らかになったとき、「実は九尾だった」という情報が突然追加されるのではなく、衣装の時点で伏線が配置されていたのである。
正体は九尾の狐
ここからは映画終盤の内容を含む。
狐面の女の正体は、九尾の狐である。
そのため「狐面の女」という呼び名は、
狐の面をつけているから狐
というだけではない。
本当に狐の妖怪だった。
しかも普通の化け狐ではなく、九尾の狐である。
この正体によって、
狐面
九尾柄の衣装
妖怪としての存在
がすべて一つにつながる。
九尾の狐
九尾の狐は、九本の尾を持つ伝説上の狐である。
中国をはじめ東アジア各地で語られ、日本では玉藻前の物語などを通じて特に有名になった。
長寿で強大な妖力を持つ妖狐として描かれることが多く、
変化
幻術
知恵
美しい人間への変身
などと結び付けられる。
『妖怪大戦争 ガーディアンズ』では、そうした古典の九尾狐伝承をそのまま再話するのではなく、
狐面をつけた現代的な女性剣士
として大胆に再構成している。
玉藻前そのものではない
九尾の狐というと、日本では玉藻前を連想しやすい。
しかし狐面の女について、
「正体が玉藻前である」
とする公式設定は確認できない。
作品中・公式紹介では「九尾の狐」とされるものの、特定の固有名を持った古典妖狐としては扱われていない。
したがって、
九尾の狐モチーフ
ではあるが、
玉藻前そのもの
ではないと区別した方がよい。
渡辺ケイ
狐面の女が導くのが、主人公・渡辺ケイである。
ケイは伝説の妖怪ハンター・渡辺綱の血を受け継ぐ少年で、世界の危機を救うために妖怪たちの戦いへ巻き込まれる。
しかし当初のケイは、
臆病
戦いが得意ではない
突然の出来事に戸惑う
普通の小学生である。
狐面の女は、そんなケイに厳しい態度を取りながら、彼が前へ進むための案内役になる。
「必要なのは真の勇気」
狐面の女は、ケイへ勇気を求める存在として描かれている。
公開時のキャラクター紹介では、頼りないケイへ厳しく接しながら「必要なのは真の勇気だ」と教える人物として紹介された。
狐というと、
人を騙す
人を迷わせる
存在として描かれることが多い。
しかし本作の九尾の狐は逆である。
迷っている少年を、
正しい方向へ導く。
その意味で「狐=人を惑わす」という古典的な役割とは少し異なる。
案内役としての狐
昔話や幻想作品では、狐は人間界と異界の境界に現れることが多い。
狐について行った人間が、
山奥
妖怪の世界
不思議な宴
などへ迷い込む物語もある。
『妖怪大戦争 ガーディアンズ』でも、ケイは狐面の女の導きによって、普通の小学生の日常から妖怪たちの世界へ踏み込んでいく。
ただし彼女は、ケイを化かして破滅させるのではない。
戦うべき場所へ連れて行く。
この「異界への案内人」という役割は、狐というモチーフと非常に相性がよい。
剣士としての九尾の狐
本作の九尾の狐は、一般的な妖狐像とはかなり異なる。
人間を誘惑する美女。
宮廷に入り込む妖婦。
幻術によって人間を惑わせる妖怪。
ではない。
刀を持って正面から戦う「剣士」である。
この武人的な九尾の狐像は、『妖怪大戦争 ガーディアンズ』独自の大きな特徴である。
狐面をつけた黒い衣装の剣士という現代的なビジュアルへ、古典妖怪の九尾の狐を融合している。
渡辺綱との関係
狐面の女の過去は、主人公の祖先である渡辺綱とも結び付いている。
物語終盤では、彼女が過去に渡辺綱から恩を受けていたことが明らかになり、その恩を返すためにケイを守ろうとする。狐面の女の行動が、単に「人間を助ける善良な妖怪」だからではなく、過去から続く因縁と恩義によるものであったことが示される。
つまり、
渡辺綱
↓
九尾の狐
↓
その子孫・渡辺ケイ
という世代を越えた関係が存在する。
妖怪ハンターと妖怪
渡辺綱は伝説上、鬼退治で知られる武士である。
『妖怪大戦争 ガーディアンズ』では、その渡辺綱が「伝説の妖怪ハンター」として物語へ組み込まれている。
通常なら、
妖怪ハンター
と
九尾の狐
は敵対していても不思議ではない。
しかし本作では、過去に渡辺綱が九尾の狐を助けたことで、狐側がその恩を長く覚えている。
「人間と妖怪は必ず敵同士」という構図ではないところも、本作の九尾狐像の特徴である。
恩返しをする狐
狐面の女の物語を狐文化の観点から見ると、「狐の恩返し」という昔話的な構造も読み取れる。
日本の狐譚には、人間に助けられた狐が、その恩を返すために人間を助ける話が存在する。
『妖怪大戦争 ガーディアンズ』でも、
渡辺綱に恩を受ける
↓
長い年月が経過する
↓
その子孫であるケイを守る
という関係が描かれる。
ただし映画が特定の「狐の恩返し」昔話を原典としていると公式に説明した資料は確認できない。
そのため、伝承的な構造との類似として捉えるのが適切である。
長い年月を生きる狐
渡辺綱の時代から現代のケイの時代まで関係が続いていることから、狐面の女=九尾の狐は、人間とは比較にならない長い時間を生きる妖怪として描かれている。
これも九尾の狐らしい特徴である。
古くから妖狐は、
年齢を重ねるほど強い力を持つ
非常に長寿である
と語られてきた。
本作でも、過去の恩を何百年もの時を越えて返すことができる存在として九尾の狐が利用されている。
狐面を外す意味
映画終盤では、狐面の女が面を外すことでその正体がより明確になる。
それまで狐面は、
正体を隠すもの
神秘性を生むもの
だった。
しかし最後には、
「狐の面をつけた女」
から、
「本物の狐妖怪」
へと意味が反転する。
つまり狐面は変装ではない。
むしろ本当の自分を示すヒントだったのである。
この構造は「狐面の女」というキャラクター名そのものを印象深いものにしている。
狐面と正体隠し
狐は日本の伝承で、人間の姿へ化ける存在として知られる。
本作では、「人間の姿になった狐が、人間の顔を狐面で隠す」という少し逆説的な構図になっている。
通常なら、
狐
↓
人間へ化ける
↓
正体を隠す
となる。
しかし狐面の女は、
九尾の狐
↓
人間の女性のような姿
↓
さらに狐面をつける
という二重構造になっている。
狐の正体を隠しているはずなのに、狐面によって逆に狐であることを示している。
このデザインは非常に特徴的である。
キャラクターデザインの伏線
狐面だけでなく、コートに九尾の狐がデザインされていることも重要である。
初見では、
和風の妖怪剣士だから狐模様がある
程度に見える。
しかし正体を知った後に見直すと、
狐面
九尾のデザイン
の双方が正体を最初から示していたことが分かる。
キャラクターの設定を視覚的な伏線として配置したデザインである。
杉咲花
狐面の女を演じたのは杉咲花である。
映画公開前から「謎多き妖怪・狐面の女」として紹介され、主人公ケイを導く重要キャラクターであることが告知されていた。
杉咲花は撮影時、面で視界を制限されながら剣術アクションを行い、さらに重量のあるコートや特徴的な髪型を身につけて演じていた。
したがって九尾の狐という妖怪表現をCGだけに頼るのではなく、衣装・面・身体表現によって成立させたキャラクターでもある。
『妖怪大戦争 ガーディアンズ』
『妖怪大戦争 ガーディアンズ』は、2021年8月13日に公開された日本映画である。
監督は三池崇史。
主人公・渡辺ケイを寺田心、狐面の女を杉咲花、隠神刑部を大沢たかおらが演じた。
物語では、フォッサマグナから出現した巨大な妖怪獣によって世界が危機に陥る。
妖怪たちは妖怪獣を止めるため、伝説の武神・大魔神を復活させようとする。
その鍵となるのが、妖怪ハンター・渡辺綱の血を受け継ぐケイである。
狐面の女は、そのケイを大魔神のもとへ導く。
狐と狸
本作には狐だけでなく、狸の大妖怪も登場する。
大沢たかおが演じる「隠神刑部」である。
日本の妖怪文化では、
狐
狸
はともに「人を化かす動物」としてしばしば並べて語られる。
『妖怪大戦争 ガーディアンズ』でも、
九尾の狐=狐面の女
と、
狸の大妖怪=隠神刑部
という二大動物妖怪が主要人物として登場する。
ただし映画で両者が古典的な「狐と狸の化かし合い」を再現しているわけではない。
それぞれ独自の立場から物語へ関与する。
サウンドトラック
『オリジナル・サウンドトラック 妖怪大戦争ガーディアンズ』は2021年8月4日、映画公開に先駆けて発売された。
CD品番はRBCP-3400。
発売元はランブリング・レコーズである。
全24曲で構成され、
妖怪大戦争 MAIN THEME
妖怪様のご紹介
お礼参り
妖怪ウォッチング
妖怪屋敷
妖怪会議JAZZ
アンモナイト
狐面の女
かごめかごめ
Main theme strings
隠神 刑部
など、映画の人物・妖怪・場面に合わせた楽曲が収録されている。
サウンドトラックの多彩な音楽
サウンドトラックの商品紹介では、遠藤浩二が本作で、
大規模なスコア
和楽器
民族楽器
ジャズ
わらべ歌
など幅広い音楽を使用したことが紹介されている。
具体的には、
「妖怪様のご紹介」では和楽器・民族楽器、
「妖怪会議JAZZ」ではジャズ、
「かごめかごめ」ではわらべ歌、
と、妖怪映画らしくさまざまなジャンルが共存する。
「狐面の女」も、そうした多様な妖怪世界を音楽で描くサウンドトラックの一曲である。
遠藤浩二
『妖怪大戦争 ガーディアンズ』の音楽を担当したのは遠藤浩二である。
サウンドトラックの商品紹介でも、三池崇史監督作品を多数手掛けてきた作曲家として遠藤浩二が紹介されている。
本作では24曲の劇伴を通じて、
妖怪
冒険
戦い
コミカルな場面
大魔神
など多彩なシーンを音楽化した。
「狐面の女」は、その中でも特定の九尾の狐キャラクターを題名にした一曲である。
狐そのものがテーマであるか
「狐面の女」を狐関連楽曲として扱う際には、一つ区別すべき点がある。
この曲は、
一般的な狐面文化を説明する音楽
でも、
九尾の狐伝説を直接音楽化した作品
でもない。
あくまで、
『妖怪大戦争 ガーディアンズ』のキャラクター「狐面の女」
を表した劇伴である。
しかし、その人物自身の正体が九尾の狐なので、結果として狐との関係は非常に強い。
単なる「狐という名前がついたキャラクター」のテーマではない。
本物の狐妖怪を題材としたキャラクター音楽である。
九尾の狐の現代的再解釈
「狐面の女」が特に興味深いのは、九尾の狐の現代的なデザインである。
古典的な九尾の狐なら、
巨大な狐
絶世の美女
宮廷を惑わす妖婦
などとして描かれることが多い。
本作では、
狐面
ロングコート
特徴的な編み込みの髪
刀
剣術アクション
を組み合わせた、現代ファンタジーの女性剣士として再解釈されている。
それでも衣装には九尾の狐を残している。
つまり伝承的な要素を失うのではなく、現代的なビジュアルへ作り替えているのである。
狐関連楽曲としての位置付け
「狐面の女」は、狐との関係がかなり深い映画劇伴である。
確認できる狐要素を整理すると、
曲名が「狐面の女」
キャラクターが常に狐面を着用
主人公から「狐さん」と呼ばれる
コートに九尾の狐がデザインされている
正体が九尾の狐
長命な妖怪として過去から現代まで生きる
渡辺綱への恩を返すため、その子孫・ケイを守る
という複数の要素が存在する。
特に重要なのは、
「狐面だから狐に見える」
のではなく、
「本当に九尾の狐だから狐面を着けている」
という構造である。
最初は狐面の謎の剣士。
その狐面を外した先には、本物の九尾の狐という正体がある。
さらに古典的な九尾狐の悪役像とは異なり、過去に受けた恩を何百年もの間忘れず、人間の子孫を守る「恩返しをする狐」として描かれる。
狐面、九尾の狐、長寿、異界への案内役、恩返しといった複数の日本的な狐イメージを、現代的な女性剣士へ再構成したキャラクターのための楽曲であり、『妖怪大戦争 ガーディアンズ』を狐の視点から見るうえで重要なサウンドトラック曲である。