きつね/べっとかばー!! 狐/betcover!!
日本のロックバンド・betcover!!による楽曲である。2021年9月26日に発売されたアルバム『時間』に収録されており、全10曲中2曲目に配置されている。楽曲時間は4分24秒である。 作詞・作曲は柳瀬二郎が担当している。歌詞では、身の回りで起こる不穏なことや説明しにくい出来事を「狐の仕業」として捉える表現が繰り返され、尻尾が見える狐や、夜道を駆ける狐の姿も登場する。
基本情報
タイトル:狐
アーティスト:betcover!!
作詞:柳瀬二郎
作曲:柳瀬二郎
収録アルバム:時間
発売日:2021年9月26日
収録順:2曲目
楽曲時間:4分24秒
国:日本
アルバム『時間』には以下の10曲が収録されている。
- 幽霊
- 狐
- あいどる
- 回転・天使
- 島
- 二限の窓
- 遠い遠い親戚
- piano
- 棘を抜いて歩く
- ポポ
また、「狐」はライブでも演奏されており、2021年9月29日リリースのライブ作品『20210829 (Live at WWW, Shibuya, 2021)』にもライブ音源が収録されている。
楽曲について
「狐」は、現実の中で起こる不快なことや不可解な出来事を、狐の存在へ結び付けながら展開していく楽曲である。
歌詞では、生活に対する鬱屈した感情や、悪い噂、身体や感情の異変などが描かれ、それらについて「狐の仕業」とする表現が繰り返される。さらに、隠しているはずの尻尾が見えているというイメージや、夜道を走る狐の姿も登場する。
そのため、単純に野生動物としての狐を描いた作品ではない。
狐は、人間の身の回りで起こる奇妙な出来事や、不安、疑念などを背負った存在として描かれており、日本の怪異譚に登場する「何か悪いことが起こったのは狐に化かされたからだ」という考え方を連想させる。
楽曲全体には、何が現実で何が狐によって引き起こされたものなのか分からなくなるような、不安定で奇妙な雰囲気が漂っている。
キツネとの関係
本作では、狐はタイトルだけでなく歌詞の中心的なモチーフとして使用されている。
特に印象的なのが「狐の仕業」という考え方である。
日本では古くから、説明のつかない出来事や人間の奇妙な行動について、狐が人を化かした、狐に取り憑かれたなどと考えられることがあった。
狐は人間へ姿を変えたり、幻を見せたり、人を道に迷わせたりすると信じられてきたため、不可解な現象の原因を狐へ求める伝承が各地に残されている。
「狐」でも、主人公の身の回りに起こる嫌な出来事や異変について、繰り返し狐の存在が持ち出される。
これは狐そのものが目の前で何かを行っているというより、人間が理解できない出来事を「狐のせい」にする日本的な怪異の感覚に近い。
尻尾を隠せない狐
歌詞には、狐の尻尾が見えているというイメージも登場する。
人間に化けた狐が正体を隠しきれず、尻尾を見られてしまうという話は、日本の昔話や妖狐伝承でよく見られるモチーフである。
狐は完璧に人間へ変化したように見えても、何らかのきっかけで耳や尻尾など本来の姿を見せてしまう。
そのため「尻尾が見える」という表現には、単純な動物描写だけではなく、「隠していた正体がばれる」という意味も重ねることができる。
本作でも、目の前にいる何者かについて、表面上は普通に見えても正体は狐なのではないかと疑うような不穏な空気につながっている。
夜道を駆ける狐
本作では、狐が夜道を走っていく様子も描かれている。
夜と狐の組み合わせは、日本の狐伝承でも頻繁に見られる。
狐火、狐の嫁入り、狐に化かされて夜道を迷う話など、狐の怪異は日が暮れてから起こるものとして語られることが多い。
本作でも夜道を駆ける狐という情景によって、身近な町の風景の中に、何か人間ではない存在が潜んでいるような感覚が作り出されている。
「狐の仕業」という狐像
「狐」で特徴的なのは、狐をかわいらしい動物として描いていない点である。
本作における狐は、悪い噂や異変、不快な出来事などと結び付いており、何か得体の知れない現象を引き起こす存在として扱われている。
これは、日本の民間伝承に存在する狐の一つの側面と重なる。
狐は稲荷信仰では神聖な存在と関係する一方、人を化かす怪異として恐れられてきた動物でもある。さらに狐憑きのように、人間の精神や行動に影響を与えると考えられた例も存在する。
本作ではそうした伝承を直接説明するのではなく、「狐の仕業」という短い言葉を繰り返すことによって、狐が持つ不気味で不可解なイメージを現代的なロック楽曲の中へ取り込んでいる。
アルバム『時間』
「狐」が収録されている『時間』は、2021年9月26日に発売されたbetcover!!のアルバムである。全10曲・約43分の作品となっている。
「幽霊」「狐」といった怪異を直接思わせるタイトルから始まり、その後も「回転・天使」「島」「遠い遠い親戚」など独特の題名を持つ楽曲が並ぶ。
「狐」はアルバム冒頭の「幽霊」に続く2曲目として配置されており、作品序盤の奇妙で不穏な空気を形成する一曲となっている。
betcover!!について
betcover!!は、柳瀬二郎を中心とする日本の音楽プロジェクト/バンドである。
現在は柳瀬二郎をボーカルに、ギター、ベース、キーボード、ドラム、サックスなどを含む編成でも活動しており、ジャズロック、アートロック、プログレッシブロックなどさまざまな音楽性を横断するバンドとして紹介されている。
歌詞も明確な物語を一つだけ提示するものではなく、さまざまな情景や言葉が連鎖して独特の空気を作り出す作品が多いと評されている。
「狐」でも、狐について一つの物語を説明するのではなく、尻尾、夜道、噂、狐の仕業といった断片的な狐のイメージを積み重ねることで、人間の日常へ怪異が入り込んだような世界を生み出している。
日本に古くから存在する「人を化かす狐」「正体を隠す狐」「不可解な出来事を引き起こす狐」というイメージを、現代的で不穏なロック表現へと落とし込んだ狐関連楽曲である。