ひとりだちする きたきつねのこども ひとりだちする きたきつねのこども
手島圭三郎による絵本である。2020年に絵本塾出版から刊行された「いきるよろこびシリーズ」の一冊であり、北海道の大自然を舞台に、キタキツネの子どもが親元を離れて成長していく姿を描いている。 作者の手島圭三郎は木版画家としても知られ、本作でも力強く温かみのある版画表現が用いられている。北海道の自然や野生動物を長年描き続けてきた経験が生かされており、絵本でありながら動物の生態を学べる作品にもなっている。
あらすじ
春に生まれたキタキツネの子どもは、親に守られながら成長していく。しかし秋になると、野生で生きるキツネは親元を離れ、自分の力だけで生きていかなければならない時を迎える。
ひとりぼっちになった子ギツネは、最初は思うように獲物を捕まえられず、空腹や寒さに苦しむ。それでも失敗を繰り返しながら狩りを覚え、厳しい自然の中で少しずつたくましく成長していく。北海道の四季の移ろいとともに、一匹のキツネが大人へと成長する姿が丁寧に描かれている。
キツネとの関わり
本作の主人公は、北海道に生息する野生のキタキツネである。
キツネは擬人化されたキャラクターではなく、実際の生態に基づいた姿で描かれている。特に、秋になると親子が別れ、それぞれが独立して生活を始めるという習性が物語の中心となっており、野生動物の厳しい世界を子どもにも分かりやすく伝えている。
また、親ギツネが子どもを突き放す姿は冷たく見えるかもしれないが、それは野生で生き抜く力を身につけさせるためである。本作は、自然界における親子の愛情を、人間とは異なる形で描いている点も大きな特徴である。
見どころ・魅力
本作最大の魅力は、野生動物の生態と生命の力強さを、美しい木版画で表現している点である。
雪原や森、そこに暮らすエゾシカやオジロワシなど北海道ならではの動物たちも登場し、豊かな自然の中で生きるキタキツネの姿が臨場感たっぷりに描かれている。版画ならではの大胆な構図や質感は、北海道の雄大な風景や冬の厳しさを印象的に表現している。
また、本作は「成長」がテーマである。親に頼れなくなった子ギツネが、何度も失敗しながら経験を積み、生きる術を身につけていく姿は、人間の子どもたちの自立にも重ね合わせることができる。生きることの厳しさだけでなく、その中にある喜びや希望も感じられる作品である。
まとめ
『ひとりだちする きたきつねのこども』は、親元を離れた一匹のキタキツネが、北海道の大自然の中でたくましく成長していく姿を描いた絵本である。野生動物の生態を忠実に描きながらも、親子の愛情や自立の大切さを温かく伝えており、子どもから大人まで多くの学びを与えてくれる。
狐を題材とした作品の中でも、生態絵本としての完成度が高く、キタキツネの暮らしや北海道の自然を深く知ることができる代表的な一冊である。