すじおいぬ スジオイヌ
ブラジルの草原に暮らす小型のイヌ科動物。灰色の毛並みと尾の暗い筋、シロアリを多く食べる食性が特徴である。
概要
スジオイヌは、ブラジルに固有のイヌ科動物である。学名は Lycalopex vetulus、英名は「Hoary fox」。ブラジルでは「Raposinha-do-campo」などと呼ばれる。
主な生息地は、ブラジルのサバンナであるセラードの開けた環境である。キツネらしい姿を持つが、アカギツネなどのキツネ属ではなく、南米のキツネ類を含むスジオイヌ属に分類される。出典:IUCNイヌ科動物専門家グループ
基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
和名 | スジオイヌ |
学名 | Lycalopex vetulus |
英名 | Hoary fox |
ポルトガル語名 | Raposinha-do-campo、Raposa-do-campo |
分類 | 哺乳綱・食肉目・イヌ科・スジオイヌ属 |
分布 | ブラジル |
頭胴長 | 約49~72cm |
尾長 | 約25~38cm |
体重 | 約2.5~4kg |
主な生息環境 | セラードの草原や開けたサバンナ |
食性 | 昆虫食の傾向が強い雑食性 |
主な活動時間 | 夜間 |
体の大きさは、ブラジルの保全団体Pró-Carnívorosが示す範囲に基づく。出典:Pró-Carnívoros
姿と特徴
体は細身で、鼻先は比較的短く、耳が大きい。毛は短く、背中は灰色を基調とし、腹側は淡い色になる。耳や脚には赤みがかった毛が見られる。
尾には暗い筋があり、先端も黒っぽい。「スジオイヌ」という名前を覚える際には、この尾の模様が分かりやすい目印となる。
英名の「hoary」は、白髪交じりや銀白色を帯びた様子を表す言葉である。灰色の毛並みに白い毛が交じる外見にちなむ。出典:Animal Diversity Web
分類とキツネとの関係
スジオイヌは、アカギツネの毛色の変異や、飼い犬の一品種ではない。独立した野生動物の種である。
古い文献では Pseudalopex vetulus や Dusicyon vetulus という学名が使われていることがある。資料を調べる際には、これらの旧来の属名で記載された情報も存在する点に注意したい。出典:Animal Diversity Web
分布と生息環境
分布の中心はブラジルのセラードであり、草原や低木がまばらに生える場所など、見通しのよい環境を利用する。セラードと周辺の生態系との移行帯にも生息し、パンタナールの一部でも乾燥した開放環境から記録されている。
牧草地など、人間によって改変された土地を利用することもある。ただし、そこで見られることと、生息環境の改変が無害であることは同じではない。出典:IUCNイヌ科動物専門家グループ
シロアリを多く食べる食性
スジオイヌの大きな特徴は、昆虫を多く食べることである。特にシロアリが重要な餌となり、アリや糞虫などの甲虫も利用する。このほか、小型のネズミ類、鳥類、果実なども食べる。
完全な昆虫食ではないものの、大きな脊椎動物を狩ることより、小さな餌を利用する食生活に特徴がある。出典:Pró-Carnívoros
頭骨は小さく、歯の構造にも昆虫食に適した特徴が見られる。哺乳類学の種解説では、小さな体や頭骨、特徴的な歯列が、大型の獲物よりも昆虫を食べることに適していると説明されている。出典:Dalponte「Lycalopex vetulus」
行動と暮らし
主に夜間に活動し、単独で行動することが多い。繁殖期にはつがいで暮らす。
シロアリが群飛するなど、食べ物が豊富になる時期には、3~5頭ほどが同じ場所で観察されることもある。普段の単独行動と、餌の豊富な場所に複数個体が集まる行動の両方が知られている。出典:Pró-Carnívoros
繁殖と子育て
繁殖期にはつがいを形成し、親子の家族単位で過ごす。IUCNイヌ科動物専門家グループの解説では、一度に生まれる子は1~5頭、平均3頭で、7~8月の出産が多いとされる。妊娠期間は約50日と報告されている。
成長した若い個体は、生後9~10か月ごろに分散し、自分の行動圏を持ち始める。出典:IUCNイヌ科動物専門家グループ
子育てには、使われなくなったアルマジロの巣穴などを利用する。他の動物が掘った穴も、スジオイヌにとって大切な生活場所となる。出典:Pró-Carnívoros
保全と人間との関わり
IUCNの2020年評価では、スジオイヌは準絶滅危惧(Near Threatened)とされ、個体数は減少傾向にある。
主な脅威には、生息地の消失、交通事故、飼い犬による攻撃、感染症、人間による殺傷などが挙げられる。家禽を襲う動物とみなされて殺されることもあるが、食性研究では家禽はほとんど確認されていない。