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にほんれいいききつねにょうぼうたんとみののふげき 『日本霊異記』狐女房譚と美濃の巫覡

奈良時代末から平安時代初期に成立した説話集『日本霊異記』に収録されている狐女房譚(きつねにょうぼうたん)を題材に、その物語と美濃国(現在の岐阜県南部を中心とする地域)における巫覡(ふげき・巫女や祈祷師などの宗教者)の信仰や民俗との関係を考察した研究である。 狐女房譚を単なる昔話としてではなく、当時の宗教観や地域社会、女性観を反映した説話として読み解いている。

論文の概要

『日本霊異記』には、人間と狐が夫婦となる「狐女房譚」が収録されている。

本論文では、この物語を古代日本における異類婚姻譚(人間と人間以外の存在との結婚譚)の代表例として取り上げ、美濃地方に伝わる巫覡信仰や民間宗教との関係を考察している。

また、狐が女性へ変身する理由や、物語が成立した社会的背景についても分析している。

主な研究内容

1. 『日本霊異記』の狐女房譚

『日本霊異記』に登場する狐女房譚では、狐が女性へ姿を変え、人間の男性と夫婦になる。

しかし、正体が狐であることが明らかになると別れが訪れるという展開をたどる。

この物語は後世の「葛の葉伝説」などにも影響を与えたと考えられている。

2. 美濃の巫覡との関係

論文では、美濃地方において巫覡(巫女・祈祷師・呪術者)が地域社会で重要な役割を担っていたことに注目している。

巫覡は神や精霊との仲介者と考えられ、狐に関する信仰や伝承とも深く結び付いていた。

研究では、狐女房譚もこうした宗教的背景の中で成立・伝承された可能性を指摘している。

3. 狐と女性の結び付き

狐が女性へ変身する物語は、日本だけでなく東アジア各地に見られる。

論文では、日本では特に「妻」「母」としての狐が多く描かれることに着目し、家族愛や献身性を表現する存在として位置付けられていることを考察している。

これは中国の狐文学とは異なる、日本独自の発展である可能性が示されている。

4. 異類婚姻譚としての特徴

狐女房譚は、人間と異種の存在との結婚を描く異類婚姻譚の一つである。

論文では、

出会い

結婚

正体の露見

別離

という共通した構成を分析し、この形式が日本各地の昔話や説話にも広く受け継がれていることを示している。

この論文の見どころ

本論文の特徴は、『日本霊異記』という古典文学だけでなく、美濃地方の民俗信仰や巫覡文化と結び付けて狐女房譚を読み解いている点にある。

狐を妖怪や動物として扱うのではなく、宗教・地域社会・女性観が交差する文化的存在として分析しており、日本における狐伝承の成立背景を理解するうえで貴重な研究となっている。

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https://ko-sho.org/download/K_011/SFNRJ_K_011-06.pdf