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きつねのよめいり ふぃーちゃりんぐ かがみねりん/おすたー ぷろじぇくと 狐ノ嫁入リ feat. 鏡音リン/OSTER project

「狐ノ嫁入リ」は、日本の音楽クリエイター・OSTER projectによるVOCALOID楽曲である。歌唱には鏡音リンが使用されている。2011年8月13日に頒布されたコンピレーションアルバム『10story's』で初めて発表され、同作では朗読パート「狐ノ嫁入リ -Story-」に続く3曲目として収録された。2012年2月27日にはニコニコ動画でミュージックビデオが公開され、後に2014年4月23日発売のOSTER projectのアルバム『Attractive Museum』にも収録された。 楽曲の主人公は、人間の男性へ恋をした狐の妖怪である。人間と狐という異なる世界に生きる存在でありながら、彼のそばにいるために人間の女性へ姿を変える。しかし、その恋は思い通りには進まず、やがて愛情が執着と狂気へ変化していく。 狐の変化、人間との恋、化かし、通り雨、三途の川、そして「狐の嫁入り」という日本の狐文化を組み合わせた、妖しく悲劇的な物語性の強い狐関連楽曲である。

基本情報

タイトル:狐ノ嫁入リ
英題:The Fox's Wedding
アーティスト:OSTER project
歌唱:鏡音リン
作詞:OSTER project
作曲:OSTER project
初出作品:10story's
初出日:2011年8月13日
ニコニコ動画公開日:2012年2月27日
収録アルバム:Attractive Museum
アルバム発売日:2014年4月23日
『Attractive Museum』収録順:10曲目
楽曲時間:約4分36秒
国:日本

『10story's』では、

  1. 狐ノ嫁入リ -Story-
  2. 狐ノ嫁入リ

という順番で収録され、物語の朗読と楽曲を組み合わせた構成になっている。楽曲はOSTER projectが作詞・作曲を担当し、鏡音リンが歌唱する。

『10story's』での初出

「狐ノ嫁入リ」は、当初OSTER projectの単独アルバムではなく、なぎみそ。SYS企画のコンピレーション作品『10story's』で発表された。

『10story's』は「朗読×VOCALOID」をコンセプトとし、10の物語について朗読トラックとVOCALOID楽曲を組み合わせた作品である。朗読は声優の沢城みゆきが担当している。

「狐ノ嫁入リ」は同作の最初の物語として配置され、

「狐ノ嫁入リ -Story-」
↓
「狐ノ嫁入リ」

という流れで楽しむ構成になっている。

そのため本作は、最初から単なる一曲のVOCALOID楽曲ではなく、物語作品として制作されたことが分かる。

楽曲について

「狐ノ嫁入リ」は、人間へ恋をした狐を主人公とする悲恋の物語である。

主人公は獣である自分と人間の恋人との間に存在する境界を越えるため、水面に映る自分の姿さえ変えようとする。これは、狐が人間へ化けるという日本の妖狐伝承を直接思わせる設定である。

恋する相手と会うため、季節が変わっても想い続ける狐。

しかし、その先には別の女性の存在が待っている。

そこで、それまで一途だった恋心は次第に壊れていく。愛する人を手に入れることができないのであれば、生きた世界で結ばれることそのものを諦め、死の世界まで相手を連れていこうとするほどの激しい執着へ変化する。

かわいらしい狐の恋愛物語ではなく、純粋な恋が嫉妬と狂気へ変わっていくダークな妖狐譚である。

キツネとの関係

本作では、キツネが主人公そのものである。

主人公は自らを「獣」として認識し、人間とは異なる存在であることを理解している。そのうえで、恋した男性と結ばれるために人間の姿へ変化する。

本作には狐文化を思わせる要素として、

狐の変化
人間との恋
化かし
通り雨
狐の嫁入り
人間と妖怪という二つの世界
三途の川

などが組み込まれている。

したがって、狐を単に題名へ取り入れた作品ではなく、日本の妖狐伝承そのものを物語の土台としている。

人間に恋した狐

日本の狐伝承には、狐が人間へ恋をする物語が数多く存在する。

代表的なのが、白狐が女性へ化けて人間と夫婦となる「葛の葉」の伝説である。

「狐ノ嫁入リ」でも、狐は人間に恋し、自らの本来の姿を変えてでも相手の世界へ入ろうとする。

しかし本作では、人間との恋が幸福な家庭へ結び付くことはない。

狐は相手を想い続けるが、その愛情は報われず、最終的には破滅的な方向へ進んでいく。

そのため、人間と狐の異類婚姻譚を思わせながらも、「結婚できなかった狐」を描いた物語になっている。

人間へ化ける狐

主人公は、人間の男性へ近づくため自分の姿を変える。

狐が人間へ化けるという伝承は、日本における狐文化を代表するものの一つである。

昔話では、狐が旅人を騙すために人間へ化ける場合もあれば、人間へ恩を返したり、恋をしたりするために姿を変える場合もある。

本作の狐の場合、その目的は「恋」である。

人間を騙して遊ぶためではなく、好きな人と同じ世界で生きるために人間になる。

この点で、主人公は恐ろしい妖怪である以前に、恋に苦しむ一人の存在として描かれている。

「狐の嫁入り」

タイトルの「狐ノ嫁入リ」は、日本で古くから知られる「狐の嫁入り」という言葉に由来する。

狐の嫁入りには複数の意味があり、代表的なのが「天気雨」である。

晴れているにもかかわらず雨が降る不思議な天候を、狐たちが人間に見られないよう婚礼を行っているためだと考え、「狐の嫁入り」と呼ぶ地域がある。

また、夜に怪しい灯火が列をなして進む様子を、狐たちの婚礼行列とする伝承も存在する。

本作でも「通り雨」が繰り返し重要なモチーフとして使用されており、「嫁入り」というタイトルと雨が強く結び付けられている。

「嫁入り」の意味

本作のタイトルには、もう一つ重要な意味がある。

主人公は、愛する人の「嫁」になりたい狐である。

しかし、生きている世界ではその願いを叶えることができない。

その結果、物語の終盤では、「この世で結婚できないのであれば、死後の世界で一緒になればよい」という極端な方向へ思考が変化していく。

つまり本作の「狐の嫁入り」は、

天気雨としての狐の嫁入り

と、

狐自身が愛する男性の嫁になろうとする物語

という二つの意味を重ねた題名となっている。

「化かし合い」

歌詞には、狐文化と非常に関係の深い「化かし合い」という概念も登場する。

狐は日本の昔話において、人間を「化かす」動物として知られている。

人間へ姿を変える。

幻を見せる。

相手の認識を狂わせる。

別人になりすます。

こうした狐の能力を表す代表的な言葉が「化かす」である。

本作では、狐自身も人間の姿へ変わっているため、恋愛そのものにも「化かし」の要素が含まれている。

しかし最後には、狐の方が人間の恋愛に翻弄される。

「化かす側」であるはずの狐が、恋によって逆に翻弄されていくところも、本作の悲劇性を強めている。

三途の川

物語の終盤では、日本の死後世界を象徴する「三途」が登場する。

三途の川は、死者があの世へ向かう際に渡るとされた川である。

主人公は、現世で愛する人と結ばれることができないのであれば、死後の世界まで二人で行けばよいと考える。

ここで恋愛物語は完全に異なる段階へ入る。

「好きだから一緒にいたい」

という純粋な感情が、

「一緒に死んででも結ばれたい」

という狂気へ変化する。

妖狐の恋愛を題材にしながら、愛情と執着の境界を描いた作品でもある。

四季を通して続く恋

本作では夏、秋、冬、春へと季節が移っていく。

主人公の狐は一時的に人間へ興味を持ったわけではない。

季節がいくつも変わっても相手を想い続けている。

この四季の移り変わりによって、狐の恋が長期間続いていることが表現されている。

同時に、序盤の切ない恋心が時間とともに積み重なり、最後には制御できない執着へ変化していく過程も感じられる。

朗読版「狐ノ嫁入リ -Story-」

『10story's』では楽曲の直前に「狐ノ嫁入リ -Story-」が収録されている。

『10story's』はVOCALOID楽曲と沢城みゆきによる朗読を組み合わせたコンピレーションであり、「狐ノ嫁入リ」も物語パートと楽曲を連続して楽しめる作品として制作された。

非公式データベースでは、この朗読版も狐側から物語を語る構成とされている。

そのため「狐ノ嫁入リ」の世界を深く知る場合、楽曲だけでなく「-Story-」と組み合わせることで、主人公である狐の心情をより物語的に捉えることができる。

ミュージックビデオ

「狐ノ嫁入リ」は2012年2月27日にニコニコ動画へ投稿され、後にOSTER projectの公式YouTubeチャンネルでも公式MVが公開されている。

公式YouTubeでは「狐ノ嫁入リ feat. 鏡音リン」という題名で掲載されており、現在も作品を視聴することができる。

映像・イラスト面では「ちほ」が関わった作品として記録されており、楽曲の和風で妖しい昔語りの雰囲気を視覚的にも表現している。

アルバム『Attractive Museum』

「狐ノ嫁入リ」は、2014年4月23日に発売されたOSTER projectのアルバム『Attractive Museum』にも収録された。

同アルバムは全14曲・約1時間17分の作品で、「狐ノ嫁入リ」は10曲目に配置されている。

収録曲には、

「MARSHMALLOW HOLIC」
「POMPADOUR」
「サマーアイドル」
「ドロッセルの剣」
「レツェルの騎士」
「魔法使いのショコラティエ」
「flower of sorrow」
「狐ノ嫁入リ」
「on the rocks」
「おおかみなんかこわくないッ!」

などが含まれている。

Apple Musicでも2014年4月23日発売の『Attractive Museum』収録曲として「狐ノ嫁入リ」が配信されている。

コミカライズ

「狐ノ嫁入リ」は後にコミック作品にも展開された。

KADOKAWAから2016年3月26日に発売された『恋色病棟 OSTER project コミックコレクション』には、「狐ノ嫁入リ」を原曲としたコミックが収録されている。KADOKAWA公式では、本作を「せつない昔語り」と紹介している。

同書には「恋色病棟」「trick and treat」「恋スルVOC@LOID」などOSTER projectの代表曲をもとにした漫画も収録されており、「狐ノ嫁入リ」も楽曲から別媒体へ展開された作品の一つとなった。

OSTER projectについて

OSTER projectは、日本の音楽クリエイター・ボカロPである。

初音ミク、鏡音リン・レン、MEIKOなどの歌声合成ソフトウェアを用いた多数の楽曲を制作し、「恋スルVOC@LOID」「ミラクルペイント」「恋色病棟」「trick and treat」など多彩な作品を発表している。Apple Musicでも長年にわたる多数の作品が確認できる。

「狐ノ嫁入リ」では、狐の変化や異類恋愛といった日本の伝承的な要素を取り入れながら、一途な恋が執着と狂気へ変わっていく物語を鏡音リンによって描いた。

タイトルの狐の嫁入りだけでなく、人間へ化ける狐、人間との恋、化かし、獣としての自己認識、通り雨、死後の世界まで、狐の伝承と結び付く要素が楽曲全体に組み込まれている。

日本の妖狐伝承を、VOCALOIDによる悲恋・怪異譚として再構成した、キツネとの関係が非常に深い楽曲である。

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