きつねこうしためたねりゅうおしまさかのゆり 狐格子 ~ためたね流御師 真坂野ゆり~
成沢唱によるホラーミステリー小説で、イラストは七原しえが担当している。 2022年にそれいゆ文庫(小学館)より刊行された作品で、川崎市役所の特殊部署を舞台に、祓い屋一族の御師(おし)が怪異事件に挑む現代伝奇ミステリーである。都市伝説や民俗信仰を取り入れた世界観が特徴となっている。
あらすじ
川崎市役所には、表向きには存在しない特殊部署「くらし文化特殊支援室」、通称**「くら特」**が設けられている。
そこでは、祓い屋一族「ためたね流」の御師である真坂野ゆりが、通常の行政では対処できない怪異事件を担当していた。
新たに異動してきた若手職員・緒方太一は、怪異を信じない現実主義者。しかし、多摩川周辺で発生する不可解な事件の調査を命じられる。
狐面をかぶった謎の女性が、両手で作る「狐格子」の隙間から人々を見つめ、息を吹きかけると被害者は突然意識を失ってしまう。二人は事件を追う中で、過去の悲劇と現在の失踪事件が結びついていることを知る。
狐との関わり
本作では、狐そのものが主人公ではなく、**「狐面」や「狐格子」**と呼ばれるしぐさ、さらに「獣憑き」など、日本の狐信仰や怪異をモチーフとして物語が展開する。
タイトルにもなっている「狐格子」は、両手の指を組んで格子状の形を作る作中のしぐさであり、怪異を象徴する重要な演出となっている。
主な登場人物
真坂野ゆり
主人公。
祓い屋一族「ためたね流」の御師であり、「くら特」の主任分析官。
冷静な判断力と高い祓いの技術を持ち、数々の怪異事件を解決へ導く。
緒方太一
「くら特」に配属された若手職員。
怪談や心霊現象を苦手としているが、真坂野と行動を共にするうちに怪異の世界へ足を踏み入れていく。
作品の魅力
本作の魅力は、現代日本を舞台にしながら、行政機関と怪異退治を組み合わせた独特の設定にある。
見どころとして、
市役所を舞台にした伝奇ミステリー
狐面や狐格子など民俗的モチーフ
ホラーとミステリーの融合
バディものとしての掛け合い
現代社会と怪異を結び付けた世界観
などが挙げられる。
キツネ好きにおすすめのポイント
本作では妖狐が活躍するわけではないが、日本で古くから伝わる狐にまつわる怪異や呪術的イメージが巧みに取り入れられている。
狐面や獣憑き、祓いといった要素が好きな読者には特に楽しめる作品である。
タイトル「狐格子」とは?
「狐格子(きつねごうし)」は、本来は建築用語で、屋根や戸に用いられる格子を指す言葉である。
本作ではその名称を怪異の象徴として用い、両手で格子状の形を作るしぐさに新たな意味を持たせている。
キツネ文化との関わり
日本では狐は神使である一方、人を惑わす怪異としても語られてきた。
本作はその「神聖さ」と「恐ろしさ」の両面を取り入れ、現代ホラーとして再構成している点が特徴である。
狐面と怪異
狐面は祭礼や神楽で用いられる一方、創作作品では妖狐や怪異を象徴する仮面として描かれることが多い。
本作でも狐面は単なる装飾ではなく、事件の鍵を握る重要なアイテムとして扱われている。