ざ ふぉっくす/おでった The Fox/Odetta

「The Fox」は、アメリカのフォーク/ブルース歌手Odettaが1957年に発表した楽曲である。 Odettaのオリジナル作品ではなく、イングランドに古くから伝わる伝承歌を取り上げたもので、アルバム『Odetta at the Gate of Horn』に収録された。AllMusicでも作曲者は「Traditional」とされている。 この伝承歌は「The Fox」「The Fox Went Out on a Chilly Night」「The Fox and the Goose」など複数の題名・歌詞形で伝えられている。Smithsonian Folkwaysは、この歌の系譜を15世紀イングランドまで遡る民謡として紹介し、Harry Belafonte、Pete Seeger、Odettaらが録音していたことにも言及している。 歌詞の主人公は、一匹の狐である。 狐は夜になると食べ物を求めて町へ向かい、飼育されているガチョウやアヒルを捕まえる。そして獲物を自分の巣へ持ち帰り、待っていた妻や子どもたちと食べる。

基本情報

曲名:The Fox

アーティスト・歌唱:Odetta

原曲:イングランドの伝承歌

作詞・作曲:Traditional

収録アルバム:『Odetta at the Gate of Horn』

初出:1957年

レーベル:Tradition Records

オリジナルLP品番:TLP 1025

楽曲時間:約1分49秒

ジャンル:フォーク、トラディショナル・フォーク

歌唱・ギター:Odetta

ベース:Bill Lee

アーティストの国:アメリカ

原曲の国:イングランド

『Odetta at the Gate of Horn』は1957年にTradition Recordsから発売されたOdettaの2作目のソロアルバムである。オリジナルLPでは「The Fox」はA面5曲目に収録されている。

一方、現在流通している一部のデジタル版では収録順が変更され、「The Fox」が3曲目として表示される場合がある。Spotifyの現行配信版でも3曲目、1分49秒として掲載されている。

発売日の「日」については現在の配信データ間で差異が見られるため、オリジナル盤については「1957年発売」とするのが安全である。

楽曲について

「The Fox」は、一匹の狐による夜の狩りを物語形式で描いた伝承歌である。

物語では狐が夜に巣を出て、月明かりを頼りに町へ向かう。

やがて狐は、アヒルやガチョウが飼われている場所へ到着する。そしてガチョウを捕らえ、さらにアヒルも持ち去って巣へ帰ろうとする。

家禽を飼っている人間側は異変に気づくが、狐は獲物を持ったまま逃げていく。

最終的に狐は自分の巣へ戻り、そこにいる妻や子どもたちと獲物を食べる。

つまり歌の中心となっているのは、

狐が腹を空かせる
↓
夜に町へ狩りへ出る
↓
アヒルやガチョウを捕らえる
↓
獲物を巣へ運ぶ
↓
家族と食べる

という、非常に分かりやすい狐の狩猟物語である。

Smithsonian Folkwaysも、この伝承歌について「狐が食料を求めて狩りをし、その子どもたちがガチョウの骨をかじる物語」と要約している。

原曲の歴史

「The Fox」はOdettaによって1950年代に作られた曲ではなく、非常に古い伝承を持つ民謡である。

Smithsonian Folkwaysは、本曲を15世紀イングランドまで遡るフォークソングとして紹介している。

古い形では「The Fox and the Goose」などとも呼ばれ、夜に町へやって来た狐がガチョウを奪い、家族の待つ場所へ持ち帰るという基本的な物語がすでに存在していた。

長い年月をかけて口承されてきたため、歌詞や題名には多くのバリエーションが存在する。

そのため、

「The Fox」
「The Fox Went Out」
「The Fox Went Out on a Chilly Night」
「The Fox and the Goose」

などの名称で録音・出版されることがある。

Odetta版も、その長い伝承の中にある一つの歌唱形である。

Odetta版について

Odettaは1950年代以降のアメリカン・フォーク・リバイバルにおいて重要な役割を果たした歌手であり、古い民謡、ブルース、スピリチュアル、ワークソングなどを数多く歌った。

「The Fox」も、そうした伝承歌をOdetta自身の歌唱によって現代へ伝えた作品の一つである。

収録アルバム『Odetta at the Gate of Horn』では、Odettaがボーカルとギター、Bill Leeがベースを担当した。

アルバムタイトルにはシカゴのフォーククラブ「Gate of Horn」の名が入っているが、同作はクラブで録音されたライブアルバムではない。

AllMusicによれば、スタジオ録音によって当時のOdettaのGate of Hornでのステージを再現するような作品として制作されたものである。

当時のLP解説でも「The Fox」は物語性のある楽曲として紹介されており、Odettaがフォークソングの物語を伝える歌手として高く評価されていたことがうかがえる。

キツネとの関係

本曲における狐との関係は非常に強い。

狐はタイトルだけでなく、歌詞の主人公そのものである。

歌詞では狐が、

夜に巣を出る
食料を探す
町へ向かう
アヒルやガチョウを狙う
獲物を捕らえる
巣へ持ち帰る
家族と食べる

という具体的な行動を取る。

そのため、「タイトルに狐があるだけの楽曲」ではない。

また、人間の性格を「狐」にたとえた比喩でもない。

分類としては、

「実在する狐を主人公とした伝承歌」

が最も近い。

ただし、歌詞の狐には人間的な思考や家族の会話などが与えられており、完全な自然観察の歌ではない。

したがって、より詳しく分類するなら、

「野生の狐による狩猟を基本としながら、狐を擬人化して描いた動物民謡」

となる。

狐とガチョウ・アヒル

本曲の狐は、ガチョウやアヒルを捕食する存在として描かれている。

これは単なる空想上の組み合わせではない。

実在のアカギツネは小型哺乳類、鳥類、昆虫、果実など幅広いものを食べる雑食性の捕食動物であり、人間が飼育する家禽を襲うこともある。

そのため、

「夜に人里へ入り、家禽を持ち去る狐」

という構図は、農村社会における現実の狐と人間との関係を反映したものと考えることができる。

ヨーロッパの昔話や童話、民謡では、狐がニワトリ、ガチョウ、アヒルなどを狙う物語が多数存在する。

「The Fox」も、そうした生活文化の中で生まれ、長く歌い継がれてきた狐の物語の一つである。

狐の家族

本曲の特徴の一つが、狐を単独の捕食者として終わらせず、その先に「家族」を描いていることである。

狐が巣へ戻ると、そこには妻や複数の子どもたちが待っている。

獲物は狐自身だけが食べるものではなく、家族の食事となる。

そのため、歌の前半では人間側から見れば「家禽を盗む悪い狐」である一方、後半では「家族に食べ物を持ち帰る親狐」という別の側面が見える。

Smithsonian Folkwaysによる解説でも、狐が食料を求めて狩りをし、その子どもたちがガチョウを食べるところまでが物語として紹介されている。

この構造によって、狐は単なる悪役ではなく、「家族を養うために狩りをする動物」としても描かれている。

ただし、歌詞には明確な教訓や動物保護的な意図が示されているわけではないため、「狐を擁護することが作品のテーマ」とまでは断定できない。

擬人化された狐

本曲の狐は実在する動物を基本としているが、かなり擬人化されている。

例えば狐は月へ祈り、自分の狩りについて考え、人間のような家族関係を持つ。

さらに家族で獲物を調理する場面まで描かれる版もあり、現実の狐の生態そのものではないことは明らかである。

この擬人化は、

「狐が妖怪だから」
「狐が人間へ変身できるから」

といった設定によるものではない。

あくまで昔話・民謡・児童歌に多く見られる、動物を人間のように描く表現である。

したがって、妖狐として分類するのは適切ではない。

狐は悪役なのか

歌詞だけを見ると、狐は人間が飼っているガチョウやアヒルを奪っていくため、人間側から見れば明確な困り者である。

一方、狐側から見ると行動の目的は「食料」である。

狐は獲物を持ち帰り、自分の家族に食べさせる。

そのため本曲には、

人間側から見た「家禽泥棒の狐」

と、

狐側から見た「家族を養うために狩る親狐」

という二つの見方が成立する。

西洋の狐は「狡猾」「ずる賢い」といった役割を与えられることが多いが、本曲では相手を言葉巧みに騙すことよりも、実際に狩りをして食料を得る行動が中心である。

したがって、本曲を単純な「狡猾な狐の寓話」と分類するよりも、「狐による家禽狩りを描いた伝承歌」とする方が内容に忠実である。

妖狐・狐伝承との関係

「The Fox」には、日本や東アジアの妖狐文化との関係はない。

登場する狐は、

妖狐
九尾の狐
白狐
狐神
稲荷の眷属
人間に化ける狐

などではない。

また、

狐面
狐火
狐の嫁入り
狐憑き

といった日本の狐文化とも直接関係しない。

本曲はイングランドに起源を持つ西洋の伝承歌であり、人里へ食料を求めて現れる野生の狐を描いたものである。

同じ「狐を擬人化した作品」でも、日本の化け狐・妖狐とは文化的背景が大きく異なる。

子どもの歌としての広がり

「The Fox」は古い民謡であると同時に、英語圏では子どもの歌としても広く歌われてきた。

Smithsonian Folkwaysの児童音楽集『Music for Children, Music by Children』では、1959年にニューヨークの少年たちが歌った「The Fox」を収録している。

同資料では、この歌を15世紀イングランドまで遡る民謡としたうえで、少年たちがHarry Belafonte、Pete Seeger、あるいはOdettaによる録音を耳にしていた可能性があると説明している。

つまり、Odetta版そのものも、この古い狐の歌を20世紀のアメリカへ伝える役割を果たした録音の一つだったと考えられる。

その後もさまざまな歌手によって録音されており、AllMusicではPete Seeger、Burl Ives、Nickel Creekなどによる演奏も確認できる。

Odettaについて

Odettaはアメリカのフォーク、ブルース、スピリチュアルなどを歌った歌手・ギタリストである。

1950年代から1960年代のアメリカン・フォーク・リバイバルを代表する存在の一人であり、伝統的な民謡や労働歌、ブルース、スピリチュアルを力強い歌声で現代へ伝えた。

『Odetta at the Gate of Horn』でも、

「The Gallows Pole」
「Lowlands」
「The Fox」
「Greensleeves」
「The Midnight Special」
「Take This Hammer」

など、伝承歌やフォーク、ブルースに由来するさまざまな楽曲を取り上げている。

「The Fox」もOdetta自身が作った狐の歌ではなく、古い伝承歌を自身のレパートリーとして歌った作品である。

狐関連楽曲としての位置付け

「The Fox」/Odettaは、「ふぉくすなっ♪」において非常に明確な狐関連楽曲として扱うことができる。

狐は、

タイトルに登場する
歌詞の主人公である
夜に狩りへ出る
ガチョウやアヒルを捕まえる
巣へ帰る
妻や子どもと獲物を食べる

という一連の物語を持つ。

そのため、

「題名だけに狐がある曲」
「人間を狐にたとえた曲」

とは明確に異なる。

また妖狐や狐神ではなく、現実の狐が家禽を狩るという生態・生活文化を基礎としながら、人間のような会話や家族像を加えた伝承歌である。

さらに、その原型は15世紀イングランドまで遡るとされ、数百年にわたって歌い継がれてきた。

したがって本曲は、

「実在する狐を主人公とした伝統民謡」
「狐と家禽の捕食関係を題材とした歌」
「狐を擬人化して家族まで描いた物語歌」

という位置付けが最も適切である。

Odetta版は、その非常に古い「狐の歌」を20世紀アメリカのフォーク音楽として録音した代表的な一例であり、狐そのものが物語の中心に置かれた楽曲として高い狐関連性を持つ作品である。

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