きつねとがちょう/ぼにーじゃっくす きつねとがちょう/ボニージャックス
「きつねとがちょう」は、男性コーラスグループ・ボニージャックスが歌唱したドイツ民謡である。 現在の音楽配信サービスでは「きつねとがちょう(ドイツ民謡)」の題名で配信されており、アルバム『世界子どもの歌名曲全集-フランス・オランダ・ドイツ編-』に収録されている。Apple Musicでは同アルバムおよび楽曲の日付として1969年4月10日が表示されている。 題名どおり、狐とガチョウの関係を題材とする楽曲であり、単にタイトルへ「きつね」という語を使用しただけの作品ではない。背景には、ドイツで広く知られる子どもの歌「Fuchs, du hast die Gans gestohlen(狐よ、お前はガチョウを盗んだね)」があり、ガチョウを盗んだ狐を人間側から戒める内容を持つ。
基本情報
曲名:きつねとがちょう(ドイツ民謡)
アーティスト・歌唱:ボニージャックス
原曲:ドイツ民謡「Fuchs, du hast die Gans gestohlen」
原歌詞:エルンスト・アンシュッツ(Ernst Anschütz)によるものとして知られる
収録アルバム:『世界子どもの歌名曲全集-フランス・オランダ・ドイツ編-』
アルバム上の曲順:16曲目
楽曲時間:1分27秒
アルバム発売日表記:1969年4月10日
レーベル:KING RECORDS
配信カタログ番号:NOPA-4459
原曲の国:ドイツ
ボニージャックスによる音源は、現在Apple Music、Spotify、OTOTOYなどでも確認できる。OTOTOYでは同アルバムをKING RECORDS作品、カタログ番号NOPA-4459として掲載し、「きつねとがちょう」を全22曲中16曲目、演奏時間1分27秒としている。
なお、現在確認できる主要配信ページでは、このボニージャックス版について日本語詞の作詞者・訳詞者や編曲者まで明確に表示されていない。そのため、それらについては推測して記載しない。
楽曲について
「きつねとがちょう」は、ヨーロッパ各地の子どもの歌を集めたボニージャックスのアルバムに収録された一曲である。
アルバム前半にはフランスやオランダの子どもの歌・民謡が並び、後半には「山の音楽隊」「かわいいハンス」「小鳥の結婚式」「狩人の歌」「きつねとがちょう」「ロバとかっこう」などのドイツ民謡が収録されている。「きつねとがちょう」はそのドイツ民謡群の中に位置している。
原曲として知られる「Fuchs, du hast die Gans gestohlen」は、1824年頃から知られるドイツの子どもの歌である。ドイツ語の原歌詞では、狐がガチョウを盗んだことを前提として、ガチョウを返さなければ猟師に撃たれると警告し、最終的には盗みをやめてガチョウではなくネズミで我慢するよう狐を諭す内容となっている。
そのため、現代日本で一般的に思い浮かべられる、かわいらしい「こぎつね」の童謡とはかなり印象が異なる。
原曲「Fuchs, du hast die Gans gestohlen」
「Fuchs, du hast die Gans gestohlen」は、日本語に直訳すれば「狐よ、お前はガチョウを盗んだね」といった意味になるドイツ語圏の子どもの歌である。
ピティナ・ピアノ曲事典でも、この旋律についてドイツ民謡「Fuchs, du hast die Gans gestohlen」を原曲・関連曲として掲載し、日本語では「警告(狐よ、鵞鳥を)」と説明している。
原歌詞では狐は野生動物として描かれ、家畜であるガチョウを襲う存在となっている。そこには妖狐、狐神、稲荷、九尾の狐といった超自然的な要素は存在せず、人間と野生動物との関係を背景とした非常に直接的な「狐の歌」である。
狐がガチョウを狙うという構図そのものも、ヨーロッパの昔話や寓話などで古くから見られる狐像の一つである。本曲でも、狐は家禽を盗む捕食者として扱われている。
日本の童謡「こぎつね」との関係
この原曲の旋律は、日本では「こぎつね コンコン 山の中」で知られる童謡「こぎつね」にも使用されている。
ただし、日本語の「こぎつね」はドイツ語原歌詞をそのまま翻訳したものではない。
日本で広く知られる歌詞では、山の中にいるこぎつねが木の実などを使って身を飾る、かわいらしく牧歌的な情景が描かれている。一方、ドイツ語原曲では、ガチョウを盗んだ狐に対して猟銃を持つ猟師の存在を警告する内容であり、物語は大きく異なる。美術ギャラリーTARO NASUによる同曲の解説でも、日本の「子狐」とドイツ語原曲では歌詞内容が大きく変化していることが説明されている。
したがって、「きつねとがちょう」と日本の「こぎつね」は旋律上深い関係を持つものの、歌詞の内容まで同一の楽曲として扱うのは適切ではない。
キツネとの関係
本曲における狐との関係は「実在する動物としての狐を題材とした楽曲」に分類できる。
原曲では狐が実際に物語の中心に登場し、ガチョウを盗んだ動物として扱われている。タイトルだけに狐が含まれる作品でも、狐を人間の性格などに例えた比喩的な作品でもない。
また、狐は妖怪や神格として描かれているわけではなく、九尾の狐、妖狐、白狐、稲荷信仰など日本の狐文化との直接的な関係も確認できない。
むしろ本曲で重要なのは、「家禽を狙う野生の狐」というヨーロッパの生活文化に根ざした狐像である。
狐は雑食性の捕食動物であり、人間が飼育する鳥類を襲うことがあるため、ヨーロッパの昔話や児童文化では「鶏やガチョウを盗む狐」という役割で登場することが多い。「Fuchs, du hast die Gans gestohlen」も、そうした狐と人間の生活圏との緊張関係を子どもの歌として表した作品の一つと見ることができる。
ただし、これは原歌詞の内容から確認できる範囲での位置付けであり、ボニージャックス版の制作時に特定の狐文化や民俗的テーマを意識して選曲したという公式説明は確認できない。
狐関連楽曲としての位置付け
「きつねとがちょう」は、狐を題名だけの装飾として使用した作品ではなく、原曲そのものが狐を中心人物として描く狐関連楽曲である。
分類するなら、
「実在する狐を題材とした童謡・民謡」
「狐と家禽の関係を描いた楽曲」
「ドイツの狐文化・児童歌に属する作品」
という位置付けが適切である。
日本では同じ旋律が「こぎつね」として親しまれているため、日本のかわいらしい狐の童謡という印象を持ちやすい。しかし原曲では、ガチョウを盗む捕食者としての狐と、それを追い払おうとする人間という、より現実的で厳しい関係が描かれている。
ボニージャックスの「きつねとがちょう」は、そのドイツ民謡を日本で聴くことのできる音源の一つであり、狐が直接物語へ登場する童謡・民謡として「ふぉくすなっ♪」においても明確な狐関連楽曲として扱える作品である。